2011年12月30日金曜日

TVC15

15チャンネルに合わせたテレビをゾンビ体と一緒に土のなかに埋めるとゾンビ体がよみがえるという。15チャンネルはゾンビ体のための番組を流しているというのだ。土中深く埋められた棺のなかの漆黒の闇の奥で人知れずテレビのスイッチがはいる。砂嵐の画面が放つざらついた光をひとりみつめるゾンビ体。音声ノイズが土中にしみわたる頃ゾンビ体は完全によみがえりいたるところからはいだして地上に満ちる。

2011年12月26日月曜日

ゾンビ

ゾンビは手をもてあましている。土の中から手がはえたかのようにして手からはいだしてくるしエレベーターがひらいた途端まず目にとびこんでくるのも手だし壁から一斉につきだされるのも無数の手だ。そしてゾンビが骨つきリブのようにしてむさぼっているすがたでもっともにあう部位もやはり手首だろう。

2011年12月7日水曜日

ファイブ・イージー・ピーセス

ラジオは昨夜ピッツバーグ州で起きたゾンビ事件を報じていた。対岸はコンビナートであのころはまだ煙を吐き夜はライトが瞬く美しい夜景を見せていたが今はさびついた巨体をさらすばかりのどこまでも続く廃墟だ。なみけしブロックによこたわり少年は闇の中たばこに火をつけた。そしてラジオを切った。かすかな期待を込めて。

2011年12月3日土曜日

スタンド・バイ・ミー

少年院を三人の少年が脱走した。夜通し山越えをした。一人が崖から転落して死んだ。夜通し山越えをした。霧が晴れると眼下に町の灯が広がった。
「おい見えるか」
「ああ」
「あいつにも見せたかったな」
どこからか新聞が風で飛ばされてきた。
新聞は昨夜ピッツバーグ州で起きたゾンビ事件を報じていた。
「・・・・・・・・」

2011年12月2日金曜日

地獄の黙示録

ベトコンの急襲を受け本隊とはぐれてしまった米軍の小隊があった。
「どうやら我々の部隊は恐ろしいところに迷い込んでしまったらしい」
「このあたりのジャングルはいたるところ底なし沼だらけだ」
「いや助けようとした人間まで飲み込んでしまう人喰い沼だらけだ」
「もはや本隊の救助ヘリを待つしかない」
重苦しい空気が流れた。
ラジオは昨夜ピッツバーグ州で起きたゾンビ事件を報じていた。
「・・・・・・・・」

2011年11月18日金曜日

マタンゴ

実は島での出来事はすべて仕組まれた社会実験であり生体実験だった
だとしたらラストシーンは殊更恐ろしいものに映る
すべては窓にネオンあふれるビルの中の密室で起こっていたのだ
マタンゴという新種のキノコが発見されたか遺伝子操作されたかで
複数の男女が密室に集められキノコを投与された
そのせいで無人島に漂着し怪物に遭遇するという幻覚をみる
食欲と色欲にまみれ狭い密室のなか
被験者たちの蠢く地獄絵図が・・・・・・・・
それを冷ややかに観察する(何者か)
結果
ひとりが生き残り
あとは死んでしまったり発狂したりして途中で実験対象からはずされたのだった
密室の隅の檻に隔離された生き残りのその男
おそろしいことに
男の肉体には異変の兆候が・・・・・・・・
すべてが社会実験だったのだとしたら
実験をおこなったのは何物でその何者かはマタンゴをバラまいて世界をどうしようとしているのか

2011年11月12日土曜日

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド

1968X年のジョージ・C・ロメロのアメリカ映画『ブルース・オブ・ザ・リビングデッド』は傑作である。奴隷制度化のアメリカ南部。当時のブルースの歌詞に奇妙なシチュエーションを描いたものが散見される。脱走をはかった若い奴隷たちが帰ってくる。しかし彼らはゾンビだった。また今日も若者が脱走した。残された者たちは彼の帰還を恐れる。四つ辻で夕暮れになると夕闇の中から太鼓の音が聞こえてくる。進退窮まった脱走奴隷はすがるようにその方へ導かれる。